崩壊するまで設定足し算

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▶53.プレゼント
52.「ゆずの香り」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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50話を超えましたので、あらすじを挟んでおきます。
本編開始は下方の◇◆◇からです。

フランタ国内を旅して回っている人形‪、✕‬‪✕‬‪✕‬。博士から遺言として託された「人間とは、自由とは何か」という問いの答えを探している。

かつてこの国は技術が発展し、隣接した2つの国と切磋琢磨し合う関係にあった。しかし、その3国間で戦乱が起こり、その高度文明は喪失した。
現在、もう戦争はこりごりとばかりに、のどかな国として存在している。

博士によって数十年前に作られた人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬は、‪普段から人間のフリをしながら過ごしているが、寒い冬は色々と障りがあって難しい。

今年は人間から離れた場所で冬ごもりをして乗り切ることに決め、人間の少ない東の辺境にある山岳地帯を訪れた。

そこで村人に戦時中の施設があるという噂を聞き、
実際その山に訪れると、大型機器のある施設を見つけた。


無事に大型機器は稼働できたが、準備ができるまで時間がかかるため、施設を探検することに。資料によると、その施設はフランタ国のものではなく、隣国イレフストの技術者たちが暮らしていたようだ。
地下には長い通路もあったが、途中で危険と判断し引き返した。
そのタイミングで大型機器より準備完了の知らせがあり、
人形は音声の指示に従い開始ボタンを押した。


◇◆◇

人形が開始ボタンを押すと、
とある一点から、光線が出た。
人形が避けると、それは人形の後ろまで伸びて像を結び、
1人の男となった。
‪✕‬‪✕‬‪✕‬は振り返って確認したが、男は人間に見えるが実体はない。

「____、まずはここに来てくれてありがとう。君がこれを聴いているということは、私は無事にみなを国に帰せたということなんだろう」

男は喋り出した。大陸で使われるのは共通の言語ではあるが、その細部は国によって異なってくる。とはいえ隣国程度なら差異も少なく何とかなる。
✕‬‪✕‬‪✕‬は資料を読み込んでいたこともあり聞き取りも問題がない。しかし、話
しかけても男から反応が返ってくることはなく、ひたすら一方的に喋っている。
加えて施設が使われていた頃からすると、男の見た目が若すぎる。今話しているものではなく、資料と同様、残されたものだろう。


メッセージを私が代表して伝える。これから渡すものは、私たちから____への誕生日とクリ・ス・マスを兼ねたプレゼントだ。
最近局内の雰囲気が暗かったのでな、すまないがダシにさせてもらった。
それと、秘密にしていて悪かった。
急に周りの奴らが元気になって____を構い出したから戸惑ったろう。
遠く国から離れた場所に押し込められて、国への不満もあったのだろうな。
みんな嬉々として乗ってくれたぞ。
国にバレれば、機密の私用化、個人への技術流出、ああ、材料もくすねてやったから横領も付いてくる。
これを受け取れば、晴れて君も共犯者だ」

ここまで楽しげに話していた男の様子が一変、真面目なものに変わった。

「この施設は廃棄処分したと、国には伝えておくつもりだ。ここにあるものは何でも持って行ってくれて構わない。技術を継ぐも継がぬも君の自由だ。施設が必要なくなった時には開始ボタンをもう一度、今度は長押ししてくれ。地下通路を抜けるであろう3日後に自壊するよう設定してある。しかし、政府の考えることは分からないな。あんな計画を立てるなんてなぁ。おかげで今年もクリ・ス・マスが祝えなくなってしまったが、せめて君には贈ろう。では、そろそろメッセージを終わらせるとしよう。遅くなったが誕生日おめでとう。それから良いクリ・ス・マスを。おっと、くれぐれもプレゼントは持って行ってくれよ?」

最後に85年前の日付けを言い、男は消えた。

消えた男の先、大型機器を稼働させる時に触れた柱状の機械から軽快な音楽が流れてくる。
天井からぶら下がる明かりの装飾もあり、祝いの雰囲気が醸し出されている。

やがて機械の下部分が開き、中から小さく丸いものが現れた。

12/24/2024, 3:16:48 AM