風が冷たい。ひとりで歩く帰り道、ポケットの中で手を握る。あの人のぬくもりを、まだ覚えてる。好きだった。ただ、それだけで十分だった。でも季節は進む。置いていかれるのは、いつもやさしい方だ。街の灯りがにじむ夜、マフラーを巻きなおして、小さく息を吐いた。白い息が消えるころ、少しだけ心が軽くなった気がした。冬支度って、たぶん、こういうことなんだろう。誰かを忘れる準備をしながら、それでも、明日を迎える支度をすること。冬支度
11/6/2025, 3:57:12 PM