Open App

勿忘草は一本の茎から枝分かれ、無数の花を咲かせる。それらは頭を寄せ合うように咲いていて、常にひそひそ囁き合っていた。
今日は風が強いね。花びら一枚ちぎれそう、どうしよう。
くっつけ合った頭たちの少し下、茎の半ばくらいの位置に、一輪だけ孤独に咲いている。他の花と同じく青い花びらを持っているが、位置が離れているだけに、疎外感はひとしおだった。
その一輪は下から呼びかける。
おーい、混ぜて。
声は風に吹き消される。
羨ましげに上を見上げていると、仲間の花びらがちぎれて風に飛ばされていった。
嘆かわしい声が聞こえたが、それも風に消された。
彼らはこれ以上花びらを取られまいとさらに密集しあった。
風にさらされやすい位置に咲いているが、彼らは身を寄せ合える。
それが羨ましくてならなかった。

2/2/2024, 10:25:51 AM