君の声がする
朝、ベッドの上で目覚めた時。朝食の目玉焼きにケチャップをかけた時。実のない会議からやっと開放された時。コーヒーにミルクを入れすぎてしまった時。へとへとになりながら帰宅した時。いつか、君の声がするんじゃないか、と耳をすます。
随分とお寝坊さんじゃないか。ケチャップを跳ねさせるなよ。お疲れ様、どうだった。ちょうどミルクたっぷりのコーヒーが飲みたかったんだ、ありがとう。おかえり、今日もお疲れ様、君の好きな夕飯を用意してるよ。きっと君ならそういって、涼し気な印象の強い目を緩ませてへにゃりと笑いかけてくれるだろう。うんと昔の君の姿を思いだす。あれから何年経ったかな。君も私もまだ学生服を着ていたけれど、もしも君がここにいたら、今はどんな服を着ているのだろうね。
真っ暗なリビングの明かりをつける。帰り道で買った夕飯をレンジにぶち込んで、カーテンをしめてテレビをつける。
君と二人で夕飯を食べる時はいつもテレビは消していた。どれだけ一緒に暮らしていたっておしゃべりな君の話はつきなくて、テレビなんて見ている暇もなかったっけ。
またコンビニ弁当か?全くずぼらなんだから。呆れたふうに、でも底抜けに愛おしそうに笑う君の声が聞こえた気がした。
2/15/2025, 2:42:01 PM