燈火

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【どこまでも】


ねえ、神様。教えてください。
僕はこんな罰を受けるほどの罪を犯しましたか。
四肢を十字架に固定され、群衆を前に心中で問う。
飛び交う野次のせいか、答えは聞こえてこない。

群衆から離れたところに母の姿を見つけた。
眉根を寄せ、今にも泣きそうな顔をしている。
きっと母はこうなると危惧していたんだ。
だから『人前で魔法を使うな』と言いつけた。

魔法とは、不思議な現象を起こす力のこと。
例えば火をつけたり、水を出したり。
この国では、女性だけが扱えると言われている。
魔法に必要な魔力を女性しか持たないためらしい。

それなのに、僕は男の身でありながら魔法を使えた。
狩りから戻った父の怪我を治せてしまった。
治療は光魔法の一種で、特に扱いの難しい魔法。
光魔法を扱える人はほとんどいない、と母は言う。

事実、どんな文献にも男性の魔法使いは登場しない。
母の言いつけで、僕の魔法は家族間の秘密になった。
女性は魔法学校、男性は士官学校に通うのが普通だ。
僕も魔法を隠して学校に通い、騎士になった。

成績の優秀な者は、魔物の討伐に駆り出される。
剣の才能がない僕は、近くの村の支援に回された。
そこで出会った、失明寸前の怪我を負った少女。
あまりに痛々しくて、見捨てられなかった。

命には関わらない怪我。保身を優先してもよかった。
だけど、あの判断が間違いだったとは思いたくない。
そうでしょう、神様。容赦ない熱さの中で、問う。
こんな罰を受けるほどの僕の罪はなんでしたか。

10/13/2025, 8:43:45 AM