その日の朝はこと骨身に染み入るような冷たさだった。
吐き出す己の息で悴む両の手をそっと温める。
朝刊を取りに行った郵便受けに夜露が光っている。
「世の中には必要な犠牲ってあると思うんだよね」
いつかあなたがくれた言葉を自分の中で反芻する。
ありがとう、身を以てその意味を証明してくれた。
リビングに戻り、温かいホットミルクを一つ机に置く。
朝刊のトップニュースからざっと言葉の羅列に目を通す。
今日もあなたの名前は載っていない。
それでも地球は廻って朝と夜とを一巡する。
お揃いのマグカップはいつまでも片割れを見つけられない。
絆創膏塗れの指で持つマグカップはほんの少し震えていた。
2/14/2025, 11:18:17 PM