シシー

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 「えー、わかんない」

 くすくす、と意地の悪い嘲笑が続く。
もうずっと昔から、ずっとこれだ。どれだけ言葉をつくしても行動してみせても何の効果もない。
その自慢の細い脚で踏みつけたもの、腕を大きく振りかぶって投げ捨てたこと、鮮やかに彩った唇から零す言葉の汚いこと。

 私はわかってるよ。

 足元に散らばるそれらを彼女らは気にしない。そう、気にしないだけで知っている。悪いことも良いことも区別がついているのに、わからないというのだ。

 「常識外れなのはどっちだよ」

 だから今日も拾う。
世間から知らないフリをされたあの子の欠片を拾って集める。私は彼女らから身を守ることができるけど、あの子はできないから。かつての私のように苦しんでいるから。

 きっとこんなこと誰も望んでない。
 それでも心の何処かでひっそりと生きていてくれればいいな、と。自己満足を押しつけに行くのだ。
 これは同情なんかじゃないよ、私の経験から得たものなの。だからさ、ありがとうもごめんもいらない。代わりに生きてあいつらにわからせてやろうよ。
 きっとこの分厚い本とかに載ってるよ。スマホだってあるし、知識もってるだけの偉そうなやつもいる。

 「ね、大丈夫」

 これは私たちを守るもの。そうでしょ。


                【題:同情】

2/20/2024, 11:09:23 AM