あさ
毎朝、目を開けばそこにあるのは大好きな彼の姿。今日も幸せだと、満ちた感情を抱きながら重い体を何とか起こした。
「おはよう」
私の一方的な朝の挨拶をあしらうようにして、背を向けて再度眠りにつく。私の言葉はぜーんぶ無視。でもそんな彼が大好きで、こんな朝を毎日飽きもせず続けている。
「あっ、今日外晴れてるよ」
昨日は土砂降りで、明日もそれが続くのかと憂鬱になった昨日の事なんて綺麗さっぱり忘れてて。
「気温も暑すぎないし丁度いいね」
ベランダの窓を開け、心地良い風を体全体で感じていると、私の隣を彼が横切った。
「ちょっと、地面まだ濡れてるよ?」
私の忠告を聞き流しながら行ったせいで、彼は水溜まりに手を突っ込み、飛び跳ね、私の足に爪を立てしがみついた。
「ほら言ったじゃん」
お手入れしてる綺麗な私の足が、見事に傷だらけ。まあそれを覚悟して一緒に過ごしている訳だけど。
「足拭いてあげるから」
平均よりも大幅に越えている体重。それを軽々に持ち上げるのは至難の技ではない。
「おっも……あんた、少しは痩せなよ」
睨まれた気がする。勘違いかな。
持ち上げた拍子に、彼の匂いが鼻腔をくすぐる。
「こんないい匂いしてたっけ」
「に"ぁ」
下手くそな鳴き声と、私の笑い声が部屋に響いた。
6/9/2024, 1:03:33 PM