黒山 治郎

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こんなに冷ややかに澄んだ空気の夜は
なんだか人が少しだけ嫌になる。

暗いコンクリートの石階段へ座り込み
冷気に熱を奪われ白く切り抜かれた呼吸が
口から延々と狼煙の様に上がるのを見ると
誰にも見つかりたくない気持ちが溢れて
情動に溺れそうな胸中を護る為に
私は一層、強く膝を抱えてしまう。

…ただひとり、君にだけ

どうしようもなく逢いたくなって
他の熱源じゃ心は冷めたままなんだと
独白で何処までも空っぽな駄々をこねた。

ー ただひとりの君へ ー

1/19/2025, 6:13:12 PM