千歳緑

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君の目を見つめると



 馬鹿なことをしたと思う。
 突然現れた白馬の王子様に身を委ねてしまえば、幸福な未来は約束されていたはずなのに。
 間男を呼び、行為を見せつけるという最悪な方法で裏切ったこと。
 死刑は確定されただろう。運が良ければ、国外追放か。
 それでも、後悔はない。



 王子の目を見つめた瞬間、わかってしまった。
 この人は汚いものを見たことがない。
 母親の死を、継母の冷遇を、父の放置を、継姉の嫌がらせを知った私と違う。
 キレイなものに囲まれて育ち、その世界は悲しみはあれど恨むべきものはないと信じている。
 汚してやりたいと思った。
 好意を向ける者には、必ず同じように返してくれると信じている貴方。
 その慈悲に満ちた目を汚したい。
 愛に溢れる目を黒く染めたい。
 キレイなものしか映さなかった目を、キタナイもので染め上げたい。
 私の手で。私の身体で。 



 そして、私を見つめて欲しいの。
 顔や見てくれだけじゃない、私のキタナイ部分まで。
 表面だけ見ないで。
 感情を向けて。
 怒りでいい。憎しみでいい。
 貴方の真っ直ぐな感情を、私だけに向けて。



 あの家族達みたいに。
 『私』をここにいない者ように、
 見ないでください。
 

4/6/2026, 1:50:02 PM