衣替え
もうすっかり寒くなっていた。
嫌な予感がして、いつもの森に駆け込む。
そこで友のエルフが木に寄り添って枯れかけていた。
「ああ、いかないで。どうして」
思わず涙を流しながら彼女の肩を揺さぶる。
「大丈夫。少し眠るだけ。生命の芽吹く季節が来たら、私たちまた会えるから」
「いやだ…まだここにいてよ…」
分かってた。日が経つに連れて彼女の髪の色が変わっていっていたから。
エルフはその名の通り森の精霊。
樹々が枯れれば彼女らも消える。
「少しの辛抱でしょ?ほら、森もヒトのように衣替えをするのよ」
彼女はクスッと笑った。自分はずっと泣いていた。
「君たちには一瞬なんだろうね…。冬なんて。分かった。待っているよ。」
森と人、次の衣替えの季節にまた会おう。
花の便りが来る日まで。
10/22/2024, 3:18:05 PM