ヒロ

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――げっ。マジか。

朝起きて、キッチンへ向かう前にリビングへ立ち寄って思わず足を止めた。
俺の方が早起きで一番乗りだと思ったのに。
いや、早起きには違いないのか。
けれども、ソファーの上で大の字に転がって、こちらに向かってニョキっと足を突き出し沈む先客が既に居る。
そろりそろりと近寄れば、思った通り、いびきをかいて眠る親父が居た。
「何で今日に限ってここで寝てるんだよ」
呟かれた文句にも気付かずに、親父はすっかり寝こけている。
昨日の帰りが遅かったのは知っていたが、まさかここでダウンしているとは。
冷蔵庫にとっておいた夕飯を食べた形跡はあるが、それを片付ける気力もなかったようだ。
食べた後の食器もそのままに、ソファー手前のテーブルに放置されていた。
よっぽど疲れていたのだろう。
「しょうがねえな」
極力音を立てずに食器を回収し、入ってきたときと同じようにそろりそろりとその場を離れる。
それから忍び足でキッチンへ向かい、シンクへと静かに食器を運び出した。
今日は日曜日。そして親父の誕生日だ。
サプライズの第一段に、部長直伝のちょっと凝った朝食を披露してやろうと思っていたけれど、仕方がない。
俺が勝手に企んでいたことなのだから、くたびれて帰って来た親父に罪はない。
作っている間に物音で起きてしまうかもしれないが、せっかく揃えた材料もある。
親父の目が覚めるまでに、出来るとこまでやってしまおう。
「まだそのまま寝ててくれよ」
いびきのリズムを聴きながら料理するのも一興だ。
さあ、親父はどの段階で起きるだろうか。
笑いをこらえながら、朝食の準備に取りかかった。


(2024/08/03 title:046 目が覚めるまでに)

8/4/2024, 10:04:58 AM