「すぐに死なないとダメですか?」眩しいくらいに光っている星のすぐ下で屋上から身を投げようとした僕にその女は言った。「どうせ死ぬならちょっと私と踊りませんか?」
は?何を言ってるんだ。どこのだれだかわからない女にそう言われ、言葉が出ない。理解のできない時間が数秒過ぎた時、飛び降りる寸前の場所までいたはずの自分がその女の目の前にいた。そしてまた沈黙が続く中、その女と真剣な瞳で向き合っていたのだ。惹きつけられる瞳に曇りはなかった。何が起きているのか分からないが、あの瞬間だけは死ぬことを忘れていた。今になってもあの瞬間が不思議でたまらない。思い出そうとしてもその後の記憶はなく気づけば屋上で朝を迎えていた。どう考えても夢のような話だが本当の話だ。間違いなくあの日誰かに助けられて今を生きている。
10/4/2024, 4:01:44 PM