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突然の別れとは、その名の通り突然やってくるものだ。

春の日差しが差し込み、カーテンがゆるくたなびく部屋で、わたしは絶望の面持ちで床を眺めた。
「…どうしよう」
床に散らばる破片たちが日差しを反射してキラキラと輝く。
「…ありえない」
「あちゃ〜、それはもう修復不可じゃない?」
姉の無遠慮な物言いにわたしの中のなにかがブチっと切れる音がした。
「っそもそも!お姉ちゃんがテーブルの端っこに置いとくから!どうしてくれるの!!これ限定100個の超貴重なマグカップなんだよ!!しかも二個で一個のデザインになるやつ!!!一個割れたら意味ないじゃん!残された片方の気持ちも考えてよ!!ニコイチでずっとやってきた相棒が目の前で割れてこの子もショック受けてるのになんでそんなアッサリした態度とれるの!?相棒を失ってるんだよこの子は!!長年連れ添った相棒を…!」
歯を剥き出しにして怒るわたしをみた姉はゲンナリした顔で呟く。
「…オタクきも」
仕方がないだろう、オタクは元来気持ち悪い生き物なのだ。

5/20/2024, 4:42:01 AM