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人工気候制御衛星〈アウロラ〉が、初めて「秋」を降らせた。

赤銅色の葉が、重力に従うように大気中で舞い落ちていく。
だが、それらは本物の葉ではなく、微細なプログラムの断片だった。

人々は空を見上げ、季節を疑似体験する。

それは四季がなくなった世界の話。

「秋の訪れ」とは、すでに自然現象ではなく、都市が選んだ演出にすぎなかった。

ただ一人の観測者だけが、それに気づいていた。

葉のひとひらに、誰も書き込んだはずのないコードが混じっていることを。

〈帰還まで、あと一年〉

それは、地球外で漂う何者かのメッセージだった。

10/1/2025, 11:26:56 AM