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『子供のままで。』

保育の仕事で子どもたちを預かっていると、
「ピンポン♪」とインターフォンが鳴るたびに
幼い子どもたちが、
「ママ!」と目を輝かせて
玄関の方を指差し、
反応することがあります。

ママやパパがお迎えに来てくれた!
と思ってるんですね。
そんな幼い子どもたちの
まっすぐな親への絶対的信頼感が
ほほえましくもあり、
眩しくも感じられます。

親との関係が
人間関係の土台になることを思えば、
子どもが親から愛情を与えられると
信じてやまない表情に
見ているこちらも幸せな気持ちになりますし、
ほっと安堵する思いになります。

私自身は子どもの時
親に対しても誰に対しても
うまく笑えなかったので、
子供の頃の笑顔のままで
笑えることがどんなに
ステキで幸せなことかと
子どもたちを見ていてふと考えるのです。





『失われた時間』

コロナ禍が始まろうとする数週間前に夫が倒れた。
半身麻痺の障害が残る症状で
入院が半年ほど続き、
その間、私は家のことと子どものこと、
そして仕事を済ませてから
毎日、病院へ面会へ行った。

急な状況の変化とこれからの生活のことで
心身が疲弊した。
その年は健康診断の数値が悪く、
低音難聴と診断された。

あれから4年。
とにかく無事に一日が
終わるよう必死だった。

夫のことで
たくさんの手間と時間がとられ、
自分を失くすような感覚に
陥ることもあった。

正直、この生活から離れたいと
何度も思った。
そうやって自分を失くす感覚で過ごしたその頃は
苦しいだけのムダな時間でしかなかった。

だけど、もし夫の病気がなければ
私はずっと平穏と思いながら
空回りしつづける
何も掴めないような生活を
過ごしていたことだろう。

今だって大変なことはたくさんある。
でも、それ以前の暮らしより
今のほうが確かに自分の人生を
進んでいっていると感じられる。

失われた時間
取り戻せない時間

本当はどの頃のことを
意味するのだろう。





『風に身をまかせ』

山の麓のダムの近くに
ベンチがいくつかあるだけの
原っぱの広場がある

休日の朝
赤いタータンチェック柄の
レジャーシートを持って
広場に行く

誰もいない原っぱで
レジャーシートを広げ
一日が始まろうとする
空の下でゆっくりと
身体を動かし呼吸をする

大空から風が吹き抜けてくる
その風を肌に感じながら
自分の心身が大きく
開き放たれていく

この空と風が吹き抜ける中で
身をまかせ
私が在ること知る
特別な時間



5/15/2024, 8:55:12 AM