"拾ってください"
雨の中、お母さんからおつかいを頼まれて小学2年生の私は買い物に出た。
お店の前まで来た時その文字を見つけたんだ。
中には子猫一匹が入っている。
こんな雨の中ギリギリ屋根が合ってまだ濡れていないけど、これ以上の激しい雨が降ったら濡れてしまうかもしれない。
そうなったらこの子猫ちゃんはどうなる・・・・・?
雨にびしょ濡れになりながら震える猫ちゃんが思い浮かんだ。
ダメだっ。
そんなの可哀想。
うちに持って帰ろう。
お母さんはダメっていうかもしれない。
でもこの子猫をほっとくわけにはいかないし、
説得しよう。
「ごめんね。ちょっと待っててね。」
サッと自分の上着を脱いで傘で囲うようにして
私はお店に駆け込んだ。
えっと。卵。牛乳。豆腐。こんにゃく。プリン。
よしっ。
ぱぱっと頼まれたものをカゴに入れてレジへ走った。
でもレジに行ってから子猫ちゃんが脳裏にチラついて。
急いで、猫用の遊び道具と食べ物を買った。
これでいいよね。
子猫ちゃんのことを思い出して思わず顔を綻んだ。
今度こそ、レジに向かってお金を払って外に出た。
傘を退けて子猫ちゃんが無事かを覗く。
けど・・・・・・・・
いないっ!
なんで。
もしかしてあの雨のなか出ていっちゃった?
寒くないかな。
濡れてないかな。
病気にならないかな。
そう考えると悲しくて悲しくて涙が溢れた。
すると
「ニャァ〜」
さっきの子猫ちゃんが足に擦り寄ってきた。
あぁ、よかった。
いなくなったわけじゃなかったんだ。
「もう。心配したのよ。帰ろう私と。」
かわいい。クリクリした目を見て優しくそういうと。
ありがとうっと言うようにニャーと鳴いた。
片手に荷物。片手に私の上着で包んだ子猫ちゃんを持って家に向かった。
「ダメよ!もといたところに返してきて!」
やっぱりダメだって言われた。
「お願いお母さん。私がお世話するから。
しかもこの子まだ子供なの。
拾ってくださいって書いてた。
これからずっと1人なのかもしれない。
私はお母さんがいて悲しくないけど、この子は悲しいかもしれない。だからいいでしょ?」
必死に頼むけど。
「ダメよ。」
聞いてくれない。
じゃあ、
「私この子と外にいるから!
この子を飼ってくれないんだったら私もこの子と外にいるの!」
「なにを言ってるの。
ダメに決まってるでしょ。風邪引くわよ。
その猫は置いてほら。体拭きなさい。」
「いやっ!」
どうしても離したくなくて。この子と一緒にいたくてお母さんを見つめると。
「はぁ。仕方ないわね。」
渋々うなづいてくれた。
よかった。
「これからはずっと一緒よ。」
子猫ちゃんを見てそう言った。
11/15/2023, 11:56:22 AM