しきのみや

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 好きな色は何か、と訊かれることは人生において少ないようで意外と多い。例えば英語の授業での簡易な応答の中でWhat color do you like?と訊ねられたりすると、何かしらの色を答えなければならない。そのような場面で今まで私はなんと答えて来たのだろうか、と二十年に満たない自分の人生を回想してみる。思いつくままに挙げてみると、青、黒、灰色、とかそんな色だった気がする。大体が寒色か、無彩色。こうして見ると私は随分と目立たない色を好みがちな印象を受ける。それはきっと、目立つような赤や黄といった暖色を好まないという消極的な理由が強いように思う。昔からずっと目立ちたくなくて、誰の意識の上にものぼりたいと思わなくて、地味な服装ばかりしていた。その結果として、青や黒といった静謐な色を好むようになっていったのだろう。ただ、好きな色を黒というのは、なんというか印象が悪い。こいつ暗い奴なんだな、と思われること請け負いである。別にそう思われることは構わないのだけど、面倒臭いことに「そう思われたがっている」と思われるのは気に障るのだ。だから、大抵は青と答えている。

6/21/2024, 3:13:45 PM