【つまらないことでも】
最近の若い人間はにつまらないことでも本当によく笑う。
まったく、そんなことでエネルギーを使ったら一日中寝ていてもたりないだろうに。
吾輩は猫。 名前は知らん。
今日もあの2人組の若い娘たちが
『スーパーの焼き芋が安くなった。』だの、
『あの雲は犬みたい。』『いや違う。猫だ』とか
やれやれ、単独行動の猫には知り得ないものよ。
猫は群れを作らない。
今日その日を寝て起きて、食料を探す。誰かに気を遣うこともない。その日の情景を眺めて生きることにただひたむきにいる。
食うもの、焼き芋の話しはともかく、雲はどうにでも変わるんだ。何に見えても不思議はないだろう。
『あれー猫ちゃんだ。焼き芋食べるかな?』
夕暮れ時、チャイムの音が聞こえて少しした時刻。
さっきの2人が目の前にいた。
『えー猫って肉食でしょ?』
ふわりと甘い、黄色い香りが立ち上る。
そういえば最近獲物を捕る回数が減った気がする。
『わ~食べた食べた。』『って、かわいい…っ!!』
芋の味に、いつぞやの記憶を思い出す。
生暖かい、人間の膝の上で丸くなっていた。
あの時上から落ちてきた屑もこんな味がした。
あぁ、そうだ。僕にも独りで生きていなかったときがあったんだ。
ふいに風の冷たさがしみた。
『ね、うちらの家に来る?』
飼われるなんて、猫にとってはつまらない出来事。
でも、
『にゃ~』
8/4/2023, 1:19:21 PM