オレの相棒は、気づくとどこかに行っている。
隣にいると思っていたのに、少し目を離しただけで姿が消えていた、なんてことが何度もある。
まるで見えない羽根があるみたいだ。
背中に生えた希薄な存在を静かに羽ばたかせて、気配だけを残して、軽々と遠くに飛んでいって、
それで、
オレが届かないところまで、
待って。
嫌だ、
行かないで、
待っ
「…どうした、?」
「え」
気づけば、相棒の手を握っていた。
「…」
ちゃんと隣に、いる。
「……どこにも、行かないよな?」
思わず呟いた。
「は…」
「絶対オレんとこに戻ってくるよな?」
「………」
「な…?」
相棒は戸惑った顔をしていたが、やがて目を伏せ、呟いた。
「……ま、お前の頼みならな」
「…………ほんとに?」
「なんで今嘘つく必要があるんだよ」
「…じゃ、約束」
そう言って小指を差し出すと、相棒は柔らかく微笑み、そっと指を絡めてきた。
大きくて透明な羽根に包まれたみたいに、空気がぬくもった。
【透明な羽根】
11/8/2025, 12:40:21 PM