『星が溢れる』
夜空の栓が抜けたような夜だった――と、後に皆は語り合った。
気がつくと、銀色の粒が視界を埋め尽くしていた。
それは「降る」というより、器から「溢れ出した」という表現が正しく感じられた。
一際大きな流れ星が尾を引くと、カラン、と乾いた音がして足元に光の欠片が落ちた。
拾い上げると、掌にやさしい熱が灯る。
星はひとつ、またひとつと地上に溢れ、街灯の下やベンチの隅を淡い光で侵食していった。
人々は慌ててバケツを持ち出し、この稀有な輝きを掬い集めた。
溢れた星で満たされた街は、まるで逆さまになった星空のよう。
夜明けが近づき、星々が溶けるように消えていく。
人々の手の中に残ったのは、ほんの少しの温もりと、星屑が擦れ合ったような、銀色の微かな香りだけだった。
3/16/2026, 4:58:00 AM