前歯で齧り取ったリンゴ飴の味がわからないくらいに高鳴る心臓の鼓動は、神輿の子供が叩く力強い太鼓の音とシンクロしていた。いつもはピアノを弾く大きくも繊細な手に包まれたわたしの手は、亜熱帯のような熱気と緊張の湿度にまみれて湿っている。─────クラスの誰かに会わないだろうか。そんなことばかり考えていると不意に耳元でいい声が囁く。「俺から離れないで」
7/28/2024, 11:35:22 AM