とうの

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光の中をひとりで歩むより

僕はもっと考えるべきだった。
あの時、光と闇の狭間で、一度立ち止まるべきだった。
今、僕は強烈な光と静寂に襲われている。目の前には、輝く砂浜、青い海、そして雲ひとつない空。しかしそこにあるのは完全な無。沈黙、そして孤独。歩いても歩いても、誰もいない。静止画の中に放り込まれたみたいだ。闇の中で彼らといた時間が恋しい。どうしてひとり光の世界へ出て閉まったのだろうか。闇の方への扉は消え、僕はもう彼らのもとには戻れない。
僕は全てを得て、全てを失った。もう彼らと一緒に、闇の中を怯えながらも支え合い、歩調をあわせて進むということはできない。光の中で孤独に怯えるだけだ。
きっと、人はひとりでは生きられない、というのは正しい。目に見えるもので満たそうとしても、いつまでたっても心は満たされないのだ───
そう思った時、ふと、海とは反対側の、崖の方にある歪な扉が目に付いた。その扉は妙に僕の心を引き付けた。
───彼らは、あの向こうにいるのか?
重い体を、前に、前に、とゆっくりと進ませる。
僕は、扉を開けた。先は完全な闇。ただ、彼らの声は聞こえてくる。僕を、呼んでいる。
僕は、一歩踏み出す。ドアが閉まる音がする。今度こそ戻れない。
ただ、彼らと一緒になら大丈夫。そう思った。


「I would rather walk with a friend in the dark,
than alone in the light.」ヘレン・ケラー


12月2日『光と闇の狭間で』

12/2/2022, 2:18:16 PM