『静寂に包まれた部屋』
何もかもが嫌になって投げ出したくなって、
耳を塞いでいた日々。
何を見ても、何を聴いても、何も知っても、
退屈だった。
楽しい気持ちすら、無くなった。
いつだったっけ?
とある日に道端ですれ違った人に、
自分が落としたハンカチを拾ってもらったことがあった。
その人はかなり遠いところから来ていたみたいで。
その人と今自分がいるところについて話したり、
ちょっとした悩み事を話したりしているうちに。
「そういえば、“透明空間”という名の休憩所、
見たことないかい?」
「いや…見たことないですね」
「おっかしいなあ…君、一度通り過ぎたことがあるはずだよ」
「え?なんで…」
「そろそろ家路につかなきゃいけない。私はこれで…」
そう言いながら、鈴のついた鍵を小さなカバンから出し、
去っていった。
透明空間…?休憩所…?
そんなところあるのかな?と思いつつ、
スマホのマップに「近くの休憩所」と検索してみた。
どうせただの休憩所しかないでしょ…と思ったが、
検索結果が出た。
error
あれ?電波でも悪いのかな?
ここらへん電波悪いなんて聞いたことないし…。
何回も検索してもerrorしか出てこない。
「…まあ、いっか。帰ろう…。」
そう諦めて帰ろうとした時、
鈴の音がした。
振り返ると、
“透明空間”と書かれた看板の休憩所があった。
「嘘でしょ…?」
恐る恐る近づいてみると、近くに猫が通り過ぎた。
猫は鼻先で、そっとドアを開けた。
猫は振り返り、鳴き声を出す。
入らないの?の言わんばかりの見つめ方。
“透明空間”に入ってみた。
一歩ずつ、歩を進めた。
何歩か進んでいくうちに、
通りすがりの猫はいつの間にか去って行った。
9/30/2024, 1:38:29 AM