彼がいなくなる夢を見た。
彼は凄く悲しそうな顔をして「ごめんね」と呟いて私を置いて去っていく。
まって、まって! と私が走って叫んでも彼は振り返らず、背中はどんどん見えなくなっていく。
ついには完全に見えなくなって、絶望した私がうずくまって泣いている夢だった。
だから目が覚めてすぐ彼の部屋に彼がいるか見に行った。
彼は机に向かって何かを書いていた。ランプに照らされた横顔が普段見せない難しい顔で、少し見惚れてしまった。
私の視線に気がついたのか、彼はいつもの優しい顔になって私に微笑みかける。
「どうしたの? もしかして眠れないのかな?」
「……こわいゆめ、みた。あなたがいなくなるゆめ。
……いいこにしてるから、いなくならないで」
彼は私をギュッと抱きしめて「いなくなったりしない!」と叫んだ。
それがすごく嬉しくて、私の心は幸せでいっぱいになった。
でも……こんなに幸せでいいのかな。
彼の温もりを感じながら私は少しだけ怖くなった。
5/18/2025, 12:11:57 PM