中宮雷火

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【手紙】

山本幸一郎様

拝啓
本年も山茶花がいっせいに咲きだす季節が巡ってまいりました。
先生がお亡くなりになられて約半年が経ちました。 
天国ではいかがお過ごしでしょうか。
私は、この手紙を病室で書いています。
というのも、虫垂炎になってしまったのです。
数日前までは酷く痛んでいましたがも、今は少しだけ楽になりました。
心配しないでください。

病室で何日も過ごすのは、やはり慣れないものですね。
毎日同じ景色で、非常に退屈です。
先生は、長くこの景色を見ていたのですね。
私には今、先生の苦しみが少しだけ分かるような気がします。
私にとって唯一の楽しみは、窓越しの外の景色を見ることです。
窓から見える秋の空虚な空が、私は好きです。
淋しいものですが、この人肌の恋しさが堪らなく愛おしいのです。
私も大人になってしまったのでしょうか。
大人は秋が好きですから。
先生が病室から見ていた景色も教えて欲しいです。

他愛もない話になってしまいましたが、これからも私は先生の教えを胸に頑張ります。
そんな私を、どうか天国から見守ってほしいです。
先生のご多幸をお祈り申し上げます。

               敬具

11月11日
             山本鞠子

8/2/2024, 1:35:21 PM