はた織

Open App

 絶大な欲望を目にした今日の私は、昨日の私と明らかに違う。

 『本は読めないものだから心配するな』という本で、管哲次郎は語った。日本の英語教育に足りないものは、ジョン万次郎のように、その地に生きる為の知識と言語をよく学ぶ知的欲求である。これが「絶大な欲望」だ。

 偶然にも、京都旅行の宿泊先の店主が、そのような知的欲求に生きる人であった。来日してきた旅行者ともっと深い話をしたい、彼らがすでに知っている言葉以上のことを知りたいと各国の言語を習得した。台湾語や中国語、英語やフランス語、そしてスペイン語。

 小柄な店主の身体の中には、世界の国々の言葉でたくさん詰まっていた。彼は、ドラえもんの道具で何が欲しいかと尋ねられたら、4次元ポケットそのものが欲しいとに強欲に答えた。

 そもそもこの店主は、あらゆる言語を身につけた後は、音楽で人々と語りたいとハーモニカやギターを独学で身につけた人だ。4次元に集ったすべての道具を使いこなす知識欲がうかがえる。

 音でも言葉を交わせる、そんな自分たちのバンドの曲を聞いて欲しいと、東西の老若男女問わず、多くの人たちの前で音楽を奏でたという。

 言葉の無限の可能性を信じた者は、音そのものにも言葉があると信じて歌うようである。絶大な欲望の先をもっと見たい、そんな人と出会えた良い旅であった。
               (250522 昨日と違う私)

5/22/2025, 1:12:17 PM