冬華(トウカ)

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誰にも言えない秘密
それは、君にも言えない秘密
そんな秘密を、胸に抱き、君に別れを告げる
君は止めた、それでも無理やり、あえて嫌われるような言い方で、別れた
「君のことを好きじゃないんだよ。あの時の輝いていた青春はもう、ここにはないんだ。さようなら」
自分でも、伝えるときは辛かった
でも、君を悲しませたくなかった
君が泣いているところは、見たくなかった
愛する人が泣いているのは、見たくないから、お別れをした


「君に、会いたいなぁ…」
白いベッドの上、白い部屋の中で小さくつぶやく
その声は、口につけられた緑色のマスクによってくぐもっている
周りに立つ人達は、家族や親族、友達のみんな
その中に、君の姿はない
それは、自分で選んだ道の、当然の結果だけれど、それでも君に会いたいと願ってしまうのは、ただのわがままで、めいわくだろう
君と別れたあの日、私は病院で、不治の病にかかっていたことを医者から知らされた
私を愛した君だから、私だけを見つめてくれた君だから、私のせいで悲しませたくなかった
私だって、愛していたから、君だけを見つめていたから
君との思い出が蘇る、懐かしくて、キラキラしてて、君への想いが強くなるばかり
視界が滲んで、涙が流れてくる

ガラッ!

と、病室の扉を勢いよく開け、入ってきたのは、
全速力で走ってきたであろう、君だった
私は驚きを隠せずにいると、君が抱きしめて
「なんで言ってくれなかったんだ!僕は、言われなきゃ、伝えてくれなきゃ、わからないって!あれほど言ったのに!」
「…ごめんね…君を、泣かせたく、なかったんだよ…」
私の声は、涙で濡れている、君の声も、涙で濡れているが、私への愛を、はっきりと感じた
「僕も、君を泣かせたくないんだ、君を、君だけを愛しているから、君が泣いているところは見たくないし、君が幸せになっていなきゃ、嫌だ」
「だから、こんな私がいても、幸せじゃないと…」

「バカか!君は、本当にバカだ!」
まさか、ここで罵られるとは思わなかった、私が、「ごめん…」と呟いた瞬間
「いいか!僕は、君が大好きなんだ!愛してるんだ!君が不治の病にかかっていても、君が不器用でも、泣き虫でも、なんでも!」
そこで一息をついて、君は言った
「僕は、君と一緒じゃなきゃ、幸せになれないんだよ」
それは、今の私には、もったいなすぎる言葉だった
君のための幸せだと思っていたけど、それは違かった
そんなひどいことをした私が、それを受ける権利なんて、ないと思った
「君、今、私がこんな言葉受ける権利ないとか思ったでしょ」
なんで、こんな時だけ、私の考えがわかるのだろうか
「君が君である限り、僕は君に愛を注ぐ、そして、君からも愛が帰ってくる、それが、幸せなんだよ。それじゃあ、ダメなのかな…」
私は、さっきよりも、涙を流しながら、首を振る
「いいよ…ごめんね…!私、自分勝手だった…!君の気持ちも知らないで…君を悲しませて…私、最低だ…!」
「いいんだよ、君が謝らなくていい、君の気持ちを聞かなかった、僕が悪いんだ…ごめん、辛い思いをさせて…!」
この時、私は幸せだった
君も幸せだった
私たちは、来世でも一緒になるのだと、そう確信していた

6/5/2024, 11:04:41 PM