とある恋人たちの日常。

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 出張修理の帰り、バイクを走らせていた。
 日差しが肌に刺さって痛くて、この季節にバイクで行くのは失敗だったなーなんて考えながら角を曲がる。
 ビルの合間から真っ青な空が拡がっていた。そして真ん中に縦に長い三角形の雲が立ち上っている。
 
 私はこれに似た風景を見たことがあった。
 
 私は思わず端っこにバイクを止めてスマホのフォトアルバムを見ていく。
 
 確か、去年……同じくらいの季節だと思う。
 
 そうやって月ごとのフォルダから〝すべて〟を選択してスワイプを続けていく。
 
「あった」
 
 それは去年、六月頃に彼からもらった写真。
 
「これだ……」
 
 雲の形が同じゃないけど、でも同じ場所から彼が見た景色と一緒だった。
 
「こんな景色だったんだね」
 
 自然と口角が上がってしまう。そして思い出す。
 あれは入道雲だ。
 
 そうだ、思い出した。
 あの時の彼は雨が降る前に迎えに来てくれたんだ!
 
 私は慌ててスマホを掲げて写真を撮って、すぐにスマホをポケットにしまいバイクは走らせた。
 
 後で彼に送ろう。
 
 
 
おわり
 
 
 
四五五、君が見た景色

8/14/2025, 12:33:31 PM