たやは

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風のいたずら

来週は息子の通う学校のバザーがあるため、バザーに出すものを探していた。
たしか、お中元にもらった洗剤のセットと石鹸のセットがあったはず。どこだったか

若い頃に服屋でアルバイトをしていたこともあり、接客が好きだ。バザーもお客さんがいて、品物を売ることには変わりないのでちょっと楽しみだ。

「ママ。バザー僕も一緒に見に行く。」

「いいけど、ママは午前中がバザーのお店の当番だからお昼過ぎに学校にくれば、午後から見て回れるよ。」

「分かった。そうする。」

当日の天気は快晴で風もなく、穏やかな日曜日で、学校に向かう足取りも軽やかだ。
バザーが行なわれる学校の運動場では、陸上のトラックに沿ってクラスごとにテントがいくつも張られ、テントがバザーの売り場となっていた。テントに取り囲まれた運動場の真ん中にはテーブルとイスが置かれ、飲食のできるスペースとなっている。

「良かったら見ていって下さ〜い」

「お値段は交渉もできますよ。」

あちらこちらのテントから売り子さんたちの声が聞こえる。

バザーが始まって2時間ぐらい経っただろうか。私たちのテントにピンクの帽子をかぶった3歳くらいの女の子がお父さんに抱っこされて品物を見にきていた。

「あ。」

急に校舎の方からテントの中を抜けて行くように強い風が吹き、女の子の被っていた帽子が飛ばされた。

「帽子…」

「風さんのいたずらだね。」

お父さんの優し声が聞こえ、女の子が飛ばされた帽子の方に顔を向けたため私たちも釣られ帽子の行方を追った。
帽子はあっという間に飲食スペースまで飛ばされ、その真ん中で、突然、渦を巻き出し上へ上へと昇る風にのみ込まれた。

「つむじ風だ。こっちへ来るぞ。巻き込まれた危ない。テントの外へ逃げろ!」

運動場の真ん中から私たちのテントに向かって、高さ5m位のつむじ風が土煙を上げてかなりの速さでごうごうと迫ってくる。

「きゃあー」

「なんだあれ。」

「逃げろ」

バリバリ。バリバリ。

テーブルやイス、テントを吹き飛ばし、運動場を半分ほどを横断した所でつむじ風はスーッと消えていった。
始まりは、本当に風のいたずら程度だったのにあんなに大きなつむじ風になるとは思ってもいなかった。怖かった。

幸いなことにケガをした人は1人もいなかったが、身近で自然の脅威を感じた1日だった。

1/17/2025, 1:31:28 PM