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『幸せな子供を見ると、とってもラッキーなことが
 起きるらしい』とは、最近よく耳にする噂話だ。
それが『子供だけでもそうであれ』という夢物語なのか、『そんなことはありはしない』という皮肉なのかは、果たして定かではない。
氷すら区別出来ない路地裏では関係のない話だと、嘯いた奴はこの間凍りついて消えていた。
そも幸せなんてこの世界に有ったろうか、ソレはどんな形をしているのか。
例えば、そう、表通りを行く、小さな背の。
温かなコートと帽子に埋もれた、小さな影の。
両隣を歩く大人と繋がれた、小さな手の。
子供が。
赤い頬をした子供が。
黒い眼をした子供が。
視線の合った瞬間に笑って、後ろに呼び掛けて。
「……あ、あぁ」
弾かれたように走ってくる大人が二人。
何処かで見たような顔の、
何処かで聞いたような声の、
自分によく見るような色の、
大人が二人、手を伸ばして、


路地にはよく貧民の死体が転がっている
今日も昨日も転がっている
幸せそうに笑った子供が一人
けれど誰にも見返られずに

‹寂しさ›

12/20/2024, 9:36:33 AM