小説家になりたい一般人。

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『遠い日の記憶』



誰だったか、私には忘れてはいけない人がいる。
でも誰だか思い出せない。忘れてはいけないはずなのに。
スマホのアルバムを見ても、思い出深いものを見ても、母に誰だか訊ねても、何をどうしても思い出せない。
本当に誰だっけ。

モヤモヤとした想いを抱えながら日々過ごしているとある日、テレビからとある名前が耳に入ってきた。
その名前は耳によく馴染んだ。初聞きではないと、聞いた瞬間に聞き覚えのある名前だと分かった。
私はすぐにその名前をメモした。そして、スマホで手当り次第調べ始める。
すると、調べ出てきたのは犯罪事件の内容ばかりだった。

私の胸がドキリと大きく鼓動した。
バクバクと、激しい脈を打つ心臓。

私は恐る恐る、ネット記事をクリックした。すると、顔写真が出てきて私は顔写真をじっくりと見た。
誰かに似ている、誰かの幼少期の顔にその顔は似ていた。
ということはつまり、幼少期の誰かだ。


私は自分の部屋に戻り、幼稚園の卒業アルバムを探した。
私は卒業アルバムを見つけるや否や、すぐさまページを捲った。
そして、見覚えのある、顔写真の面影と一致している子を見つけた。

あぁ、この子だ。そうだ。この子だった。この子なんだ。

「見つけた。思い出した。この子だ。そうだ、この子なんだ。この子……なんだ」
私は失望を感じた。

幼少期で事故に巻き込まれ、死にそうと思った時に私を骨折程度に済ませてくれた子なのに、なんで事件なんか犯して。犯罪なんかを犯してるのかと。失望をした。
この子を探し続けていたのに。

この子は私が入院している時に転園してしまったから感謝を言えなかった。
感謝を言いたくて、命の恩人に会いたくて、ずっと探していたのに。なんで、犯罪なんてーーーー。



私はこの日、遠い日の記憶にある命の恩人の子に失望をした。

7/17/2024, 2:36:36 PM