斎城 つかさ

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『親愛なるXXXXへ

こちらでは、一昨日からミンミンゼミが高らかに鳴くようになったよ。夏真っ盛りだね。僕は君がきっと毎日「暑いから出かけたくない」と尤もな理由を掲げて、出不精に拍車をかけているのではないかと憂慮しているよ。そこで、君の健康を心配するおせっかいな僕は、君が出かけたくなるような"おまじない"を掛けようと思い立ち、この手紙を認めるに至ったんだ。最後までちゃんと読んでね。来月の14日、隣町の〇〇町で夏祭りがあるのは知っているかい?想像してみてほしい。たこ焼きのソースのにおい、串焼きの芳ばしいにおい、ベビーカステラの甘いにおい…お腹が空いてこないかな?夏祭りと言えば屋台だよね。僕は夏祭りの屋台でつい買ってしまう食べ物があるんだ。それは丸くてつやつや、鮮やかな赤色が目を引く…そう、りんご飴。丸くてつるつるしてるからどこから歯を立てれば良いか迷うけど、思い切ってかぶりついてみると、コーティングされた飴のパリパリした歯ごたえ、姫りんごのホロホロとした食感が口の中に広がる。飴はとても甘く、りんごはジューシーとも言い難いし酸味も甘みも強くない。でも、パリパリした飴の甘さと姫りんごの食感と風味が合わさることで、普通のりんごとは違った美味しさのある不思議なお菓子になるんだ。…さて、君に「りんご飴が食べたくなるのろい」をかけたよ。"おまじない"じゃないのかって?"おまじない"も"のろい"も同じようなものさ。両方とも「呪」と書くからね。今年は夏祭りに行ってみてはどうかな。暑いのは確かだから、体調を崩さないように気をつけてね。

P.S. 人を呪わば穴二つ。手紙を書いていたら僕もりんご飴が食べたくなってしまった。一緒にりんご飴を食べに行かないかい?』

(差出人の名前は滲んでいて読めない)

7/28/2024, 1:57:03 PM