朝は肌寒くて布団に包まる。
昨日まではまだ暖かかったのに、今日は急激に身体が冷える。
もはや今の日本に秋はない。
冷たい水道水で顔を洗い、重い瞼を強制的に開かせた。
顔がヒリヒリして痛い。
クローゼットの中にしまい込んでいた厚手のコートを引っ張り出して着込む。
テレビから流れるニュースは今日の最低気温を知らせていた。
外へ出ると一気にひんやりした風が私に吹きつける。
ポケットに両手を突っ込んで、
小走りで私の家の前で待つ君のもとへ向かった。
「おはよう」
「おはよ、コート可愛いじゃん」
トナカイみたいに鼻を赤く染めた彼女は白い息を吐いた。
いつも髪を縛ってる彼女が今日はその長い髪を下ろして、白いマフラーを巻いている。
「あんたもね」
「ありがと」
そうぎこちなく顔を動かして笑う君が綺麗に見える。
いつもより静まり返った街が、
冬が始まった合図を告げているみたい。
私達は「寒いね」なんて言い合って、身を寄せて歩き出した。
“冬のはじまり”
11/29/2023, 12:12:38 PM