「いやそれ、誤解誤解。俺らはjust 『friends』だからさー」
くそぅ。なんでそこでネイティブ発音になるかな。日本語で『ただのトモダチ』って言うより耳に残るじゃねーか。
奴は私を恋愛対象な女として見ていない。そんなことくらい知っているし、それを利用して私は、他の女子よりも奴の近くにいられるワケなんだし。
ところでトモダチの定義って何よ? つるむのが多いとトモダチ? お互いのアカ交換してれば? 一緒にごはん食べ行ったりする仲なら?
それで? 片方がトモダチ以上の気持ちを持って相手に期待してたとしても、トモダチって言える?
……で。他人に誤解される程度には仲良く見えてしまう奴と私は、まぁ……トモダチ、なんだけどさ。
「吉野はさー。俺らって付き合ってんの、って訊かれても、これっぽっちも動揺しないよなー」
吉野こと私と奴との仲を確かめたくて、奴を質問責めにした女子たちが去った後で、奴が言った。
「動揺? する必要、なくない?」
トモダチならね。だから全力で演技してますよ? って、やだ私ってば、めっちゃ演技派。
「そっかー。まぁ、そーだよなー……あーでも、」
言いながら奴が私に、ぐっと顔を近づける。ったくもう! 帰国子女のパーソナルスペースはどうなってんだ、コンチクショー! と内心で吠えまくりながらも平静を装い、私は奴が続けるのを待った。
「…………」
しばらく私の顔をじっ、と見つめていた奴の手が、私の両頬を包む。私より大きな手が、冷たい──。
「こうすると……カオアカクなるんだけどな」
「え? なに?」
奴の手が、両頬から両耳に滑り。おかげで上手く聞き取れなくて、でも聞き返しても、奴は言い直してはくれなかった。
「つまり。いまのところは、なんだけどな」
「え? いまのところ、って、なにが?」
「なんだろうねー? あ、五限終わったらラーメン行くよな?」
「あー……うん。いいよー行っても」
行く行く、もちろんっ! と嬉しさをそのまま素直に伝えないjust friendsな私の演技は、今日も絶好調だ。
10/20/2025, 2:52:13 PM