vivi

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【とりとめもない話】

「もしお前が犬になったとしよう」
「は?」
「そうだな・・・犬種はドーベルマン」
「・・・・・・会長」
呆れた様子を隠すことなく呼んだところで大吾の思考は目の前の書類ではなく「峯が犬になったら」なんて非現実的な妄想に染まっている。
「警戒心は高いが、それは洞察力に長けているとも言えるな」
「私は忠誠心も高いですよ。ご存知ですか?ドーベルマンの尻尾や耳は元々あの形ではなく人工的に作られたものなんです」
「どういうことだ?」
「本来の姿は尻尾も長いし耳も垂れている。ですが、人間の道具として扱う際に邪魔になるので切るんですよ」
「やっぱりドーベルマンは無しだ」
大吾は苦い顔をして峯を見る。
峯はしくじったと後悔した。大吾が本部に立ち寄った峯にこうしてとりとめもない話をする時は、疲労が溜まっているサインだと理解している。仕事とは関係のない話をすることで気分転換をしているというのに、胸を痛めたような表情をさせてしまった。
「チワワならどうだ?」
「却下で」
「どうしてだ、可愛いだろう」
「だから嫌なんですよ」
何かを想像したのだろう大吾はおかしそうに笑っている。今度は峯が苦い顔をする番だ。
「さあ、会長。そろそろ書類に目を通してください」
「分かった分かった。可愛いチワワの頼みなら仕方ねぇな」
まだ笑いを含んだ声が放った言葉は聞き流すことにした。

12/17/2024, 12:33:44 PM