海月 時

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「何がしたいんだよ。」
焦った声で彼が聞く。私の願いは只一つだけだ。

「こんばんわ。死んでください。」
私は見知らぬ彼に、刃を向けた。しかし、彼は微動だにしなかった。
「殺したいなら、殺せ。」
彼は何事もないかのように言った。違うんだよなー。これでは、面白くない。抵抗する相手を殺す事が、楽しく面白いのだから。
「やっぱり、辞めときます。」
私が立ち去ろうとした時、彼は少し焦ったように言った。
「自己中な野郎め。何がしたいんだよ。」
「貴方は何がしたいんですか?」
彼は少し間を空けて、私に話し始めた。
「死んだ女房と娘に会いたいんだよ。あいつ等、俺を残して事故で死んじまった。俺は何度も自殺しようとしたが、震えが止まらねーんだ。そんな時にお前が現れた。」
「そうですか。」
私は考えた。死を望む彼に、どのような苦しみを与えようか。私を死んだ理由に使おうとした罪は重い。
「それで、お前は何がしたいんだよ。」
「私ですか?そうですね。」
名案を思いついた。面白さもスリムも、絶望も満点。僕は自分の腹に刃を立てた。
「貴方は自分で死ぬ事ができず、一生どん底に居てください。貴方のような人間には、惨めな姿が似合いますよ。」
「何故そこまでする?」
「笑っていたいから。」

昔から夢見ていた。世界が終わる最後まで、笑うのは私だけが良いと。そのためなら、私はどんな大罪も怖くない。さて、これからどうしようか。まずは、神でも殺そうか。

7/18/2024, 4:15:55 PM