とわ

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衣替え



夏が終わった。
とうに通り過ぎていたことに気付いていたはずなのに、それを認めたくはなかった。


つまるところ俺は多分、断捨離されたのだ。

「忙しいから。」
うん、俺も忙しいよ。

「お前には他にいい人がいると思うし。」
目線を揺らしながらよく言う。向き合うのが怖いからだろ。

片方が終わりと言ったら、終わりだ。
残ったのは二人でどこだかの駅の中の洒落た店でスパイスカレーを食った時に作った白Tシャツの染みくらい。あ〜あ。
見る度に微笑ましかったはずの致命的な染みは、今やカレーを食った時の後味みたいに疎ましい。

あぁ、それから、まあ可愛い方が好きかと買ったユニセックスなラップパンツもある。
パンツと同じ長い布がアシンメトリーに巻かれてる黒いやつ。
好きだったんだけどな。季節も選ばないって買ったのに、これからは履いても惨めになるだけか。

なるべくなんでもないようにゴミ袋を取ってきて、窓から流れ込む秋めいてきた空気を吸い込みながらそれらを中に放り込んで、まだ空きはあるのは重々承知で口を縛る。

「…秋服でも買いに行くかぁ。」

俺にだって断捨離は出来る。衣替えだってやれる。
涙を流すことに費やす時間は少しもないんだ。

10/22/2023, 2:16:39 PM