蒼ノ歌

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『鋭い眼差し』

彼は周りから所謂『強面』という認識。
ちょっと目つきが鋭くて怖いけど...。
でもホントは違う。
彼は本当はあぁ見えて優しいんだよ、皆んな?

みんな知ってた?
彼は実は吹奏楽部員でね。
前は私の隣でクラリネットやってたんだ。
すごく上手いんだよ。小さい頃からやってるんだって。
周りからキツく見られがちだけど、楽器吹いてる時の彼はすこし優しく見えるんだ。
クラリネットみたいな、あったかい感じ。

みんな知ってた?
彼が私に向けてくれた眼差しは全然痛くないんだよ。
やっぱり君は周りとは違う。
ちゃんと私のこと、分かろうとしてくれたね。
皆んなの眼差し、本当は痛かったんだ。

みんな知ってた?
実は彼、イタリアンなんだ。
だからほら、昼ごはんだってナポリタンだ‼︎
私、一口貰いたいけど、我慢するよ。
......最近の君、いつも寂しそうに食べるよね。

みんな知ってたでしょ?
実は彼、本当はあの時そこにはいなかった。
みんな寄ってたかって彼を責めたよね。
みんな彼の目つき怖いって言うけど、みんなの方がよっぽど怖かったよ。




「なぁ、お前...」
あれ、どうしたの?もう私はそこに座ってないよ。
なんでそんな悲しいお顔しちゃうのさ。
ほら、泣かないで。
君の涙を拭ってあげたいけれど、出来ないんだよ。

もう私は一輪の『花』でしか君の目の前にいられない。

10/15/2023, 12:08:02 PM