桐島乃蒼

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彼女の心にはよく雨が降る。
毎晩、一度ひどく降ってはすぐに腫れ上がる突発的な通り雨が、彼女の心にはやって来る。

「疲れるなぁ、ホント」

雨上がりの地面がいつもぐちゃぐちゃになるように、彼女の心もそう簡単に元には戻らない。

「あたし、なんでこんなに疲れるんだろ。生きてるだけで、なんでこんなに辛いんだろ」

窓際でそう話す彼女の濡れた瞳が、月明かりに照らされて少し光る。
その姿を目の前にすると、大丈夫だと慰めることさえ無責任に思えた。

明日も雨はやって来るだろうか。
きっと来る。生きている限り、通り雨は過ぎ去らない。
自分が傘になれないことは知っている。
それでも側にいることが、せめてもの救いになると信じて、静かに泣き続ける彼女を抱き寄せた。そのまま何時間もそうしていた。気づけば夜は明けようとしていた。

2022/9/28:通り雨

9/27/2022, 10:27:24 PM