〝刹那〟
長めの信号を待っていると、背後から衝撃を感じた。
フワッと、身体が前に倒れ込んでいく。
赤い信号機やトラックの音がやけに遠くて、
代わりに今までの記憶がフラッシュバックしている。
所謂、走馬灯というものだろうか。
ああ、私は死ぬのだな。
そう思い目を閉じようとしたその刹那、
誰かが私の腕を掴んだ。
「ひゃっ」
「おい、大丈夫か」
「ありがとうございます…って、アンタか」
「親友に向かってアンタか、とはなんだ」
「ごめんごめん驚いちゃって…」
「ま、無事でなりより」
「おかげさまで助かったよ。あと、なんでここに?」
「いや別に、偶然外歩いててさ。
見かけたから、声掛けようと思ったんだ。
それで近づいたら、オマエが倒れかけてたってわけ」
「そっか、偶然に感謝しなきゃね。今から時間ある?」
「ああ、特に用事もないけど」
「じゃ、お礼に奢らせてよ!最近いい店見つけたんだ」
「おっいいじゃん」
「決まりだね!よしっ行こいこ!」
顔の赤さがバレないように、急いで彼を先導する。
親友が違う存在になるのは、意外と早いかもしれない。
4/29/2024, 12:36:20 AM