睡眠

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そして、いつの間にか彼女は家を出ていった。

シンクに溜まる皿、畳まれず残る洗濯物。掃除機くらいかけようかと重い腰を上げてもそれは充電切れで、電源コードを探すのも億劫になりやめてしまう。

カーペットの上にごろりと転がり床に落ちていた髪を拾う。
髪の毛ってこんなに落ちてるのかと少し驚き、それを意識しないでいれた生活を思って目を閉じる。

大事にしないと、と思う気持ちは月日と共に薄れていた。
彼女が目の前で出ていったとしてもきっと俺は追いかけない。
急いで飛び出して抱きしめて謝る、みたいな芝居をうつ元気もなかった。だから黙って行ってしまったんだろうな。

不意にガチャとドアが開き、寝転びながら目をやるとそこには部屋に入らずに佇んでいる彼女が居た。

芝居は彼女の方からうつようになっていた。

ゆっくりと起き上がり両手を広げる。

涙を滲ませながら駆けてくる彼女の手にはアンティークのフォークが握られていた。

10/30/2025, 3:09:28 PM