7/30「澄んだ瞳」
「僕の目を覗くと、未来が見えるんだよ」
たまたま二人きりになった放課後、そんな冗談みたいな話を転校生はした。私は小首を傾げる。
「未来?」
「見てみなよ。ほら」
彼は身を乗り出す。一点の曇りのない瞳。それをじっと見つめていると―――
ちゅっ
唇に柔らかな感触。えっ?と思う間もなく、彼は至近距離でにっこりと笑った。
「じゃあ、また明日ね!」
手を振って去って行く。呆然と、その背中を見送った。
僕は、少し未来から来た。
この学校のとある男に、彼女を渡したくなくて。
素直すぎる彼女が、男の暴力に晒されるのを止めたくて。
大丈夫、今度の未来は上手く行く。
僕を見つめた彼女のどこまでも澄み切った瞳を思い出しながら、僕は確信した。
(所要時間:8分)※構想除く
7/30/2023, 11:44:39 PM