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〈子猫〉

 子猫を拾った。
 いや、正確には勝手についてきて、勝手に住み着いてしまった。
 僕はたまたま同居人になったそいつと一緒に暮らすことにした。急いで納屋から猫用トイレやケージを出す。僕が子供の頃に飼っていたねこのものだ。捨ててなくて本当によかった。あとは、ご飯や猫砂を買いにいけば、とりあえず大丈夫なはずだ。
「こういう子はね、まずは動物病院につれていかないと」
 病気を持っている可能性があるからね、と彼女が言う。
「わかってるよ」
 ぶっきらぼうに返す。彼女は気にするそぶりもなく、食器棚を勝手に漁っている。
「このへんに、ねこのごはんをいれるのにいい感じのお皿があったよね」
 僕はそれを眺めながら、子猫を抱き、キャリーにいれる。あたたかい。いのちの温度。
「じゃあ、病院つれていくから」
 いってらっしゃーい、と手を振る彼女を見て、僕は一人暮らしの家を出る。

11/15/2023, 12:08:29 PM