子どもの頃
毎年お盆になると、祖父の実家
いわゆる本家とよばれる家に
親戚が集まっていた
わたしの住んでいた街から
車で1時間の長閑な場所
公道から家まで
両脇にどこまでも続く
広い畑を眺めながら私道を登り
大きな家の前には
整えられた庭と
鯉が泳ぐ池をわたる小さな橋
庭先でいつも曽祖母が
ゴザの上で草餅を作っていた
小屋にいる牛を眺めたり
畑にいってトマトをとって食べたり
その上を大きなカラスアゲハがとんでいて
子どもたちみんなで追いかけた
…本家のおじさんが亡くなった
葬式のあと
本家のあった場所を訪れた
祖父が亡くなってからは
疎遠になっていたので
知らなかったのだけれど
数年前の地震の影響で
おじさんはここを離れて
町で暮らしていたらしい
家はもうなく
庭は荒れ果て
池は緑の藻で覆いつくされていた
子どもの頃はあんなに大きく見えた畑も
大人になった今では小さく見える
それは少し寂しく感じたけれど
わたしの中のあの景色は
いつまでも変わらずに
残るのだろう
7/9/2025, 3:29:32 AM