瑠璃

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《元主の代わりの××の香り》
(刀剣乱舞/薬研藤四郎)


ある夏の日の事だった。

宗三左文字が薬研藤四郎に用があり、部屋を尋ねた。


「薬研、明日の出陣の事ですが....」


彼の部屋の戸を開けた時、ふわりと何かが香った。

部屋の主の薬研は「ん?どうかしたか?」と、読んでいた本から顔を上げて返事をする。

「薬研。何か香でも焚いていたんです?」

「ん?あぁ、さっき大将から沈木の香水とやらを貰ってな。まぁ俺らからしたら沈木自体の方が馴染み深いけどな」

その答えを聞き、宗三は「あぁ、なるほど」と頷いた。

そして同時に、審神者が彼に沈木の香水を贈った事は偶然か、はたまたわざとなのかとも思ったのだ。



「信長の葬式に、遺体の代わりに沈木の仏像を入れたとか」

「そんな話もあるらしいな。俺からすりゃ、蘭奢待を切り取った話の方が好きだけどな」

「好きも嫌いもあるものですか」



この短刀は、かつての主の葬式で、骨すら残らなかったが故に、代わりに焼かれた物と同じものをその身から香らせるのだ。


(焼失した刀に、その香りを纏わせるとは、今世の主もまた変わった人間ですね....)


長谷部や不動が知ればどんな顔するか、想像するだけで困ったものだと嘆くばかりだ。

8/30/2024, 11:39:37 AM