よく見慣れた逆さまの景色。
私は縄で縛られた上に高い木から吊るされているところだ。
「師匠ーーー」
ぶらぶら揺れつつ呼んでみても返事はない。
何でこんなことになっているかって?そりゃあ勿論お仕置きだ。言いつけを守らないとたまにこうなる。
そろそろ限界かもしれない……そんな私を見かねてか、師匠が姿を現した。手に雉を持ってるから今日は鍋かな?なーんて。
へらりと笑ったのが気に入らなかったのか、師匠は苦無で私を吊るしていた縄を切った。
「わっ!」
頭から落ちる!
と思ったけど抱き止められていて。ホッとした次の瞬間には地面に投げられていたけど。
「何をしている、縄抜けくらいできるだろう」
「んまぁ、できるけど」
師匠に教わった縄抜けでするすると自由を手に入れた。しっかり縛られていたから全身痛いんですけど……
「雉も撃たれて落ちる時に逆さまになるのかな?」
「雉は高くは飛ばん、逆さまにはならんだろうな」
「あっ、そうですか……」
「なるのはお前くらいだ」
「はい……」
師匠が雉を捌くのを手伝う。
実は逆さまもちょっと面白いんだよ、と言おうとしたけどやめておいた。次のお仕置きがもっときつくなるような予感がするから、ね。
【逆さま】
12/6/2023, 11:01:35 AM