黄昏の教室。
とん、と書き終わったノートで机を叩く。
開いた窓の向こうからは運動部達の賑やかな声が聞こえてくる。
まるで帰宅部のクセに帰らず、わざわざ教室に残って宿題を済ませる私をからかっているみたいだ。
だってしょうがないじゃないか。
なんて、誰に言うでもない文句を心で唱えて口を尖らせる。いや、言いたい相手はいるけれど。
そう、しょうがない。
しょうがないのだ。
そんな私を風までが笑う。
ふぅと強く吹いたそれにカーテンが広がった。
手招くようなそれ。
邪魔だからという理由を引っ提げて、椅子から腰を上げる。
そしてまとめてしまおうと思って手を伸ばした私を…それはばさりと食べてしまった。
あぁ、ほら、またここにいた。待ち伏せていた。
視界を占める蕩けるような眼差しの中に満更でもなさそうな自分を見つけて嫌になる。
このひとときの為に、だなんて。
本当にひととき。
正気に戻った頃には、私はごそごそしたカーテンを握りしめてポツンと立っているだけ。
黄昏の教室。
とん、と上履きを鳴らして背を向けた。
熱いのか冷たいのか、本当に触れたのかも分からない唇を撫で、上を向いている口端に呆れ返る。
適当な廊下で背中を壁に押し付け、ずるずると座り込む。
あぁ、まったく。私ときたら。
なんて厄介な者に『 』してしまったのだろうか。
視界の端で、やっぱりからかうようにカーテンが揺らいだ。
10/11/2023, 10:28:08 AM