YOU

Open App

夏 二人だけの。 真昼の夢 揺れる木陰 です。



「今年の夏も暑いんだって」
ギラギラと照りつける太陽を見上げ、キミはうんざりしたような顔をする。
「そうみたいだね。家から駅まで近いのに、その距離さえも、歩くのが億劫になるよ」
僕がふぅ。とため息を吐けば
「ホントにね」
キミは落胆したように、はぁ。と息を吐く。
「けどさ」
僕をちらりと見るキミは表情を一変させ
「夏にしかできないこともいっぱいあるし、楽しまなきゃ損でしょ」
ニッと笑う。
「…そうだね。海も行くし花火も見る。祭りも行くしグランピングも…暑さに負けてられないね」
「そうでしょ、そうでしょ」
キミはふふふと笑うと
「その日のために…」
僕の手を掴み
「買い物行くよ!」
駅まで引っ張ったのだった。


二人だけの。

「ホントに、出かけなくて良かったの?」
僕の家に来たキミに問いかけると
「うん」
キミはニコッと笑う。
今日は久しぶりのデート。
「どこかに出かけようか?」
と聞くと
「あなたの家に行きたい」
と言われ、今に至るわけなんだけど…。
キミが借りてきた映画を見て、買って来てくれたお菓子を食べ、のんびり過ごす。
キミもくつろいでいるようだから良かったけど、仕事で疲れてる僕を気遣って、家デートにしてくれたんだろうな。そう思うと、気を遣わせて申し訳なかったな。という思いも出てくる。
「僕を気遣って、家に来てくれたんだよね。ありがとう」
夕食を作るね。と、キッチンに向かったキミを背中から抱きしめると
「あなたのこと大好きだし大切だから、ゆっくりしてほしいな。と思ったのは確かだよ。けどね」
キミは僕の方に顔を向け
「どこかに出かけるのも楽しいけど、出かけなくても私はいいの。だって、私が大切にしたいのは、あなたと二人だけの。時間だから」
そう言って微笑む。
「僕と二人だけの?」
「そう。二人だけの」
キミは僕の左頬に手を添えると、右頬にキスをしたのだった。

真昼の夢

「お昼、一緒に食べない?」
僕に声をかけてきたのは、社内で人気が高いと言われている受付嬢。
「え?僕ですか?」
「そう、あなた」
声をかけられたのは僕じゃないだろう。と聞き返すも、僕だと言われてしまう。
何で僕なんだろうと思うけれど、もちろん、悪い気なんてしない。
他の社員の痛い視線を感じながら
「僕で良ければ喜んで」
と微笑んだところで
「何、ボケっとしてるんだ」
頭を小突かれる。
「え?え?」
わけが分からず、頭を押さえると
「何だ?真昼の夢でも見てたのか?」
僕を小突いた彼に呆れられる。
「もう少しで昼休憩だ。それまで頑張ろうぜ」
僕の肩をポンと叩き、彼は颯爽と去って行く。
「…受付嬢に声をかけられるのは、彼みたいな人なんだろうな」
去って行く彼の背中を見ながら、僕はため息を吐いたのだった。


揺れる木陰

「ここ、入ってみようか」
犬と散歩をしながら立ち寄った公園。
そこに大きな木があり、その下で休憩することにした。
「初めて寄ってみたけど、いいとこだな」
木陰は涼しいし、心地良い風も吹いている。
犬に目を向けると、何やら尻尾を振っていた。
「何してるの?」
犬をよく見てみると、揺れる木陰を見ているようだ。
「ああ、木陰が動くのが楽しいのかな」
犬の頭を撫でながら、のんびりと休憩するのだった。

7/18/2025, 9:52:49 AM