きゅっ、と艶やかな唇が引き結ばれる。小さな白い手が首に伸びては、細い指が喉元を何度も撫でた。
きみは照れるといつもそうする。自覚があるのかは知らないが、全く気にしていない素振りを演じる様はいつ見ても愛らしい。平静を保っていても少しぎこちなくなる言葉に乱れてもいない髪を整えようとする指、震える長い睫毛。
そこまでして隠そうとするくらいなら、早く俺にすがりついてくれればいいのに。今の男なんてさっさと捨てればいいのに。俺が少し褒めるだけであんなに可愛い顔するくせに、きみは情だけであんな男の隣に立ち続けてる。
その愚かさすらも愛おしいのだから、きみが自分の信念を曲げてまで情けなく手の中に転げ落ちてくるときは、どんなに可愛いのだろう。
『何でもないフリ』
12/11/2023, 5:01:43 PM